整備士の人手不足と若手の定着|整備工場の職場づくりでできること
「求人を出しても応募が来ない」「せっかく入った若手が3年もたずに辞めてしまう」。整備工場の経営者からよく聞く悩みです。整備士の人手不足は一つの工場の問題にとどまらず、国土交通省も業界全体の課題として対策を進めています。この記事では、国土交通省と厚生労働省の公表資料で確認できた数字と、国土交通省の職場づくりガイドラインをもとに、整備工場が若手の採用と定着のためにできることを整理します。
整備士の人手不足の現状と国土交通省の資料
国土交通省が2023年3月31日に公表した「自動車整備の高度化に対応する人材確保の対策(中間とりまとめ)」では、自動車整備業の有効求人倍率は4.55(令和3年)で、全国的に上昇傾向にあるとされています。有効求人倍率は、仕事を探している人1人に対して何件の求人があるかを示す数字です。参考までに、厚生労働省が2026年10月2日に公表した一般職業紹介状況では、全体の有効求人倍率は令和8年8月分で1.18倍(季節調整値)でした。
中間とりまとめには、ほかにも整備の現場に関わる数字や分析が載っています。
| 項目 | 中間とりまとめの記載 |
|---|---|
| 自動車整備業の有効求人倍率 | 4.55(令和3年)。全国的に上昇傾向 |
| 整備士資格の新規受験者の申込数 | 減少傾向 |
| 整備業に従事していない整備士資格の保有者 | 約54.8万人(推計) |
| ハローワークの求人・求職の分析 | フルタイムの求人企業が示す月給の平均は、求職者が求める月収の平均より約2.6万円低い |
2019年4月の国土交通省の資料では、整備要員は約40万人でほぼ横ばい、整備要員の平均年齢は平成30年度に45.3歳に達し上昇傾向にあると整理されています。若い人が入ってこないまま、今いる整備士の年齢が上がっていく、という構図です。
整備士の人手不足を示す国土交通省の数字
整備士の人手不足は、国土交通省の資料でも数字で示されています。2023年3月31日公表の「自動車整備の高度化に対応する人材確保の対策(中間とりまとめ)」では、自動車整備業の有効求人倍率は4.55(令和3年)で全国的に上昇傾向、整備士資格の新規受験者の申込数は減少傾向とされています。一方で、整備業に従事していない整備士資格の保有者は約54.8万人(推計)いるとされ、資格を持ちながら別の仕事をしている人が多いことも分かります。厚生労働省の一般職業紹介状況では、全体の有効求人倍率は令和8年8月分で1.18倍(季節調整値)です。
整備工場の若手の定着と職場づくりガイドライン
国土交通省は2024年3月に「自動車整備士等の働きやすい・働きがいのある職場づくりに向けたガイドライン」を策定し、2025年6月に改訂版を公表しました。改訂版では、自社の状況を手軽に点検できる自己採点表が加わり、取組例には難易度や対象となる事業規模のタグが付き、好事例も8事例載っています。
ガイドラインは、働きやすさと働きがいを次の4つの要素に分けて考えています。
| 4つの要素 | ガイドラインの考え方(要旨) |
|---|---|
| 働き方・労働条件 | 仕事を選ぶ際の絶対条件。ルールを守り、多様な働き方を用意する |
| 人間関係・コミュニケーション | 選んだ仕事を続けるかどうかを決める要素。誰とでも円滑に業務上の意思疎通ができる職場を目指す |
| 人材開発(教育) | 働く意欲と生産性を高める要素。知識と技能を伸ばせる職場を目指す |
| 待遇(働く価値) | 働く意欲に大きく影響する要素。公平で分かりやすい評価を目指す |
自己採点表では、残業を減らす取組、休暇を取りやすい環境、心理的負担を軽くする面談、事故を防ぐ安全点検、女性やシニア、外国人が働きやすい環境などに点数が付いています。まず自社の点数を出して、低い要素から手を付ける、という使い方が想定されています。ガイドラインは国土交通省のホームページから誰でも読めるので、工場長や幹部と一緒に一度採点してみる価値があります。
国土交通省の職場づくりガイドラインの4つの要素
国土交通省の「自動車整備士等の働きやすい・働きがいのある職場づくりに向けたガイドライン」(2025年6月改訂)は、働きやすさと働きがいを、働き方・労働条件、人間関係・コミュニケーション、人材開発(教育)、待遇(働く価値)の4つの要素に分けています。改訂版には、自社の取組を○×で採点して点数化する自己採点表、難易度や事業規模のタグが付いた取組例、8つの好事例が載っています。人間関係・コミュニケーションは「選んだ仕事を続けるかどうかを決める要素」と位置づけられており、若手の定着を考える整備工場にとって手を付けやすい入口です。
整備工場の職場のコミュニケーションでできること
ガイドラインの人間関係・コミュニケーションの取組例には、お金をかけずに始められるものが多く並んでいます。整備工場の現場に当てはめやすいものを抜き出しました。
- 挨拶や意思疎通について会社が目指す姿を決めて、整備要員に伝える
- 朝礼で、社内の人間関係やコミュニケーションの好事例と悪い事例を共有する
- 現場のリーダーに、後輩への接し方を教える
- 若手が先輩に困りごとを相談できる機会(メンター制度など)を設ける
- 業務分担表を作り、誰が何を担当するかを明確にする
- 業務開始時にホワイトボードなどで一日のスケジュールを確認する
- ハラスメントに関する社内ルールを決め、相談先を知らせる
若手が辞める理由は工場ごとに違いますが、「聞きたいことを聞けない」「誰に報告すればいいか分からない」という状態は、どの工場でも起こりえます。指示と報告の流れを決めておくと、若手は迷う時間が減り、先輩は同じ説明を繰り返さずに済みます。報告の流れの作り方は整備工場の報連相で解説しています。



社内の連絡は、言いにくいことほど短い言葉の方が送りやすいものです。「休憩入ります」「完了です」「ありがとうございます」のように、毎日使う言葉をスタンプにしておくと、若手からも先輩に声をかけやすくなります。上の3つは日本カーネットが作った整備士・営業マン向けスタンプで、5種類はトップページの一覧で、ねこのキャラクターの整備士ねこのスタンプはLINE STOREで見られます。
情報共有の仕組みと整備工場のデジタル化
ガイドラインには、情報通信技術の活用として、インカムやトランシーバー、スマートフォンやタブレットの連絡機能(LINEなど)を入れて業務連絡を行う取組と、入庫から出庫までの過程を社内で随時共有するシステムを入れて作業の進捗を見える化する取組が挙げられています。
| 道具 | 向いている連絡 | 気をつけること |
|---|---|---|
| インカム・トランシーバー | ピットとフロントの即時のやりとり | 記録が残らない |
| スマートフォンの連絡機能(LINEなど) | 作業の報告、引き取りや外出の連絡 | お客様の個人情報を書き込まない |
| 入庫から出庫までの共有システム | 作業の進捗、入庫予定、見積もり | 全員が入力する習慣をつける |
| ホワイトボード | その日の担当とスケジュール | 工場の外からは見られない |
道具を増やすと、どこに何を書くかで迷いが出ます。「急ぎは声かインカム、報告はLINE、記録はシステム」のように役割を決めておくと混乱しません。お客様とのやりとりでの個人情報の扱いはお客様とLINEでやりとりするときの注意点にまとめています。入庫から出庫までの情報を工場の中で共有する業務システムの一例として、日本カーネットの整備システム・整備ソフト DREAM POWERがあります。
整備工場の連絡と記録を道具ごとに分ける
国土交通省の職場づくりガイドラインでは、情報通信技術の活用として、インカムやトランシーバー、スマートフォンやタブレットの連絡機能(LINEなど)による業務連絡と、入庫から出庫までの過程を社内で共有するシステムによる作業進捗の見える化が、取組例として挙げられています。整備工場では、急ぎのやりとりは声やインカム、作業の報告はLINE、入庫予定や見積もりの記録は業務システム、と役割を分けると、若手がどこを見ればよいか迷わず、担当が休んだ日でも仕事が止まりません。連絡のトークにはお客様の個人情報を書き込まない、という線も一緒に決めておきます。
整備士の人材確保に関わる制度の見直し
国土交通省は2025年7月8日、整備事業の規制を時代に合わせて見直す法令改正を公布・施行しました。発表資料では、点検・整備を行う人材の減少が課題と明記され、次のような見直しが並んでいます。
- 二級は3分の1、三級は2分の1、特殊整備士は3分の1、受験資格の実務経験期間を短縮
- 点検整備記録簿を電磁的記録で備え付け・作成できるように
- 整備主任者研修などのオンライン実施を可能に
- 一部の点検項目でスキャンツールを使った確認方法も認める
- 大型車を扱う指定工場で、一定の要件を満たせば最低工員数を5人以上から4人以上に緩和
実務経験期間の短縮で、働きながら資格を取る若手は早く受験できるようになりました。資格の取り方は自動車整備士になるにはで解説しています。国土交通省の2026年3月の検討会資料では、外国人材の受入環境の整備も議題になっていて、二級(総合)と三級(総合)の試験問題の漢字にルビを振る方針が示されています。同じ資料によると、外国人の受験は一級で約2%、二級で約18%、三級で約8%です。
人手不足は一つの工場だけで解決できる問題ではありませんが、若手が辞めない職場をつくることは、今日からできる対策です。ガイドラインの自己採点表で自社の弱いところを知り、連絡と記録の仕組みを整えるところから始めてみてください。
よくある質問
- 整備士の有効求人倍率はどのくらいですか。
- 国土交通省の中間とりまとめ(2023年3月31日公表)では、自動車整備業の有効求人倍率は4.55(令和3年)で、全国的に上昇傾向とされています。
- 若手の定着のために国の資料で参考になるものはありますか。
- 国土交通省の「自動車整備士等の働きやすい・働きがいのある職場づくりに向けたガイドライン」(2025年6月改訂)があります。自己採点表、取組例、好事例が載っていて、国土交通省のホームページから読めます。
- 社内の連絡にLINEを使ってもよいですか。
- 国土交通省のガイドラインでも、スマートフォンなどの連絡機能(LINEなど)を使った業務連絡が取組例に挙げられています。お客様の個人情報は書き込まず、記録は台帳やシステムに残す、という決めごとと一緒に使うのが安全です。
- 人手不足の工場に自動車整備システムは役立ちますか。
- 見積書や請求書、整備記録簿を自動車整備システムで作れば、手書きや転記の手間を減らせます。ガイドラインでも、入庫から出庫までの過程を共有するシステムによる進捗の見える化が取組例に挙げられています。
- 実務経験の短縮はいつからですか。
- 国土交通省の発表では、2025年7月8日に公布・施行されています。受験する年度に必要な年数は、国土交通省や運輸支局の案内で確認してください。
出典・参考資料
- 国土交通省 報道発表「自動車整備の高度化に対応する人材確保の対策『中間とりまとめ』の公表」(令和5年3月31日)
https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001597723.pdf - 国土交通省「自動車整備士等の働きやすい・働きがいのある職場づくりに向けたガイドライン」掲載ページ
https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_tk9_000023.html - 国土交通省「自動車整備士等の働きやすい・働きがいのある職場づくりに向けたガイドライン(改訂版)」
https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001895713.pdf - 国土交通省「自動車整備分野における外国人の受入れ」(平成31年4月)
https://www.mlit.go.jp/common/001282295.pdf - 国土交通省 報道発表資料「時代に合わせた整備事業規制のアップデート」(令和7年7月8日)
https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001899720.pdf - 国土交通省 第32回自動車整備技術の高度化検討会 資料5(令和8年3月19日)
https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001989713.pdf - 厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年8月分)について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_76397.html
記載内容は2026年10月8日時点で公表資料を確認したものです。サービスの仕様・料金は各公式の最新情報をご確認ください。
整備工場・車販店の連絡を、もっと早く。
社内のやりとりは整備士・営業マン向けLINEスタンプで。お客様への連絡や車検・点検の管理は、整備システム・整備ソフト DREAM POWER でまとめて行えます。料金は整備システム・整備ソフト DREAM POWER の案内ページか資料請求でご確認ください。
お電話:03-5256-7877平日 9:00〜12:00・13:00〜18:00







